事業報告概要 「環境調和型水力開発モデルの構築」・「水力の価値評価に係る調査研究」の取り組み ▶専門委員会 ▶受託業務 情報発信・人材育成に係る取り組み ▶セミナー開催情報 ▶提言 ▶水力現場の価値創造 ▶書籍 ▶論文・報文 ▶インターンシップ
事業報告概要
令和3年度
地域が主体となった小水力開発への現地支援・既往の開発事例の調査分析、環境と調和したダム・発電所の持続活用への現地支援・国内外の既往の再開発事例の調査分析、および海外における水力開発動向の調査などを行い、これらの取り組みを通して水力発電の環境の保全・改善・地域貢献、建設コスト低減策、河川の流況評価技術等に関する検討を行った。環境調和型水力開発モデルの構築と水力の価値を高めるための調査研究において得られた知見を行政や内外の大学、全国の市町村関係者などに勉強会、意見交換会等で積極的に発信し、カーボンニュートラルの実現に向けた環境調和型水力開発推進の啓発に努めた。また、愛媛大学および京都大学の学生をインターンシップとして受け入れて、河川の流況評価と小水力発電の環境の保全・改善に関する調査を行った。東京都に当研究所の活動内容を審査していただいた結果、令和3年12月に認定NPO法人の認証を得た。
令和2年度
地域が主体となった小水力開発の支援や既存ダムの堆砂・濁水対策、地元企業によるパッケージ型発電システム、小水力発電所のコスト低減、希少水生動物の保全対策、水力開発に伴う環境再生等の調査検討を通じて環境調和型水力開発モデル、および水力の価値を高め生かすための調査研究に取り組んだ。
また、ホームページを一新して水力開発に関する情報提供を充実するとともに、活動を通じて得た知見を環境省のセミナーや行政・企業との勉強会・意見交換会等で提供した。京都大学大学院および愛媛大学の学生をインターンシップとして受け入れて、既存のダム・発電所の調査、小水力発電の設備計画、環境の保全・改善に関する調査を行った。
令和元年度
多様なバックグランドを有する会員の参加のもと、国定公園内の環境と調和した小水力開発、水道ダム等の水力利用、地域用水を利用した小水力開発、大正時代に建設された水力発電所の継続活用、土砂流出が激しいダム・発電所の持続活用などへの現場支援を行い、これを通じて水力開発事業モデルの検討と水力の価値を高め生かすための調査研究に取り組んだ。また、水車発電機等の合理化や水力の系統安定化価値について議論を行った。このような内容をダム・発電関係市町村全国協議会や外部のセミナー、研修会、大学の授業、インターンシップ等で紹介し啓発活動を行った。コロナ感染症の拡大を踏まえて、下半期に開催を予定していた京都と東京でのセミナーを中止したが、会員などの多くの関係者の協力を得て、電気現場4月号(電気情報社)に「水力の現場の新たな価値創造」を特集として掲載し情報発信を行った。
平成30年度
設立2期目の30年度は、団体会員が4倍増するなど、多様なバックグラウンドを有するNPO会員が増加するとともに、事業活動の充実を図ることができた。具体的には、会員から寄せられた声を踏まえて、「流況評価技術」「既存ダム高度活用事業モデル」「地域が主体となった小水力開発事業モデル」「水車発電機等合理化」の4つの検討委員会を設置し、現場の課題に着目した調査検討活動を行った。また、その成果を自治体の協議会や大学、企業等で公園するとともに、京都と東京でセミナーを開催し、141名の多くの参加者と議論した。一環として、「日本の水力を活かすためのNPO提言」を社会に向けて発信した。さらに、水力開発に対する若者の理解の促進とその声を発信するために現場へのインターンシップの受け入れを行った。
平成29年度
設立の初年度であることから、ホームページの開設やセミナーの開催等を通じて本NPO法人の存在と活動の趣旨を周知するとともに、水力関係者に対して水力関連情報の提供を開始した。また、水量開発事業モデルに関する調査検討および具体的な小水力計画地点への開発支援を実施した。
「環境調和型水力開発モデルの構築」・「水力の価値評価に係る調査研究」の取り組み
専門委員会
再生可能エネルギー新時代における水力開発セミナー(HDRIとこれからの水力について考える)において、参加者から現場の課題およびNPOの活動に関してさまざまな意見・要望をいただいた。それらを踏まえて4つの検討委員会と1つの勉強会を設置し、個人・団体会員等の参加のもとに活動を実施している。
「環境調和型水力開発モデルの構築」に係る活動は
「水力の価値評価に係る調査研究」に係る活動
で示しています。
委員会名称 |
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流況評価技術検討委員会<活動概要> 水力開発地点における河川流況の変動を評価できる新たな評価技術を開発する。 <事例> |
既存ダム⾼度活⽤事業モデル検討委員会<活動概要> 既存ダムを総合的に発電活用するための事業モデルを開発する。 <事例> |
地域が主体となった⼩⽔⼒発電事業モデル検討委員会<活動概要> 環境に調和し地域に貢献する地域が主体となった水力発電事業モデルを開発する。 <事例> |
⽔⾞発電機等合理化検討委員会<活動概要> 小水力発電における水車発電機等の課題を分析整理し、課題解決のための提言を行う <事例> |
水力発電の系統安定化価値勉強会<活動概要> ・マイクログリッドにおける小水力発電の価値 |
受託業務
HDRIの活動目的に沿った業務を受託し、水車発電機、水力土木、水路保守、地質、ダム、水文学、土砂水理、河川環境、環境経済、事業経営、水力発電事業者、小水力支援関係者などの専門家(HDRI会員)による検討チームを業務ごとに構成して取り組んでいる。得られた知見は委託元に提供するとともに、類似の課題を抱えている水力関係者への支援やセミナーなどでの人材育成の活動に生かしている。
受託事例はこちらからご参照ください。
情報発信・人材育成に係る取り組み
水力発電の価値や開発の在り方などをテーマに、年二回程度セミナーを開催し、現場での取り組みや海外の情報などを紹介し、参加者と自由な議論を行っている。また、ホームページにセミナーの開催報告や講演資料、研究成果の雑誌記事への発表記事、HDRIからの提言などを掲載し情報発信に努めている。
インターンシップでは、京都大学の大学院修士課程学生を対象に、キャップストーンプロジェクト「地域に貢献する水力発電事業を通じて日本の再生可能エネルギーの将来について考える」を実施し、環境と調和する水力開発について研修を実施している。また、愛媛大学農学部の卒業研究学生を阿波小水力開発地点に受け入れて、落合川の希少水生動物の生息環境、および黒岩高原の湿地植生の再生に関する調査研究を実施している。
セミナー開催情報
再生可能エネルギー新時代における水力開発セミナーの開催情報はこちらからご参照ください。
HDRIの提言
- 私達の提言が「電気現場2019年8月号(電気情報社)」に特設記事として掲載されました。
- HDRIによる提言「豊かな水に恵まれた日本の水力を生かす -国の存立にかかる水利用の価値の理解を共有し、総合的な水力開発を推進-」
水力現場の価値創造
電気現場2020年4月号 (電気情報社)
I. 総論 水力開発で期待される国内外の価値創造
II. 国内における水力の新たな価値創造
・NPO 法人水力開発研究所(HDRI) の取り組み
・「こども」×「小水力発電事業」 のポテンシャル
・外部市民ファンドの活用と小水力発電ツーリズムの提案
・シュタットベルケに学ぶ 水力を利用した地域創生
・欧州の小水力発電最先端情報の発信と活用の必要性
III.水力現場の取り組み事例
・日本工営が鹿児島県伊佐市と開発した 新曽木発電所とその後の運営
・新成羽川ダムの事前放流による 治水協力の概要
・九州電力が地域とともに耳川水系の発電所で取り組むダム通砂運用
阿波小水力開発
- 2019年11月7日
国土文化研究所セミナー「今こそ問う 水力発電の価値」(京都で開催)にて、阿波の小水力開発の取り組み状況を紹介しました。 - 「阿波小水力発電プロジェクト」, 京都大学防災研究所
2016年からあば村(岡山県津山市)における小水力発電プロジェクトを支援
書籍
「今こそ問う 水力発電の価値 : その恵みを未来に生かすために」
- 井上代表理事、角理事が中心となって書籍「今こそ問う 水力発電の価値 ~その恵みを未来に生かすために~」を、国土文化研究所の研究会を通じて出版。
- 2019年度のダム工学会著作賞を受賞。
論文・報文
京都大学防災研究所年報
- Study on Planning of a Small Hydropower Development under Consideration with the Basin Environment, DPRI Annuals, No. 60 B, 2017, Kazuki TERADA, Tetsuya SUMI, Yasuhiro TAKEMON and Motoyuki INOUE, 第60号B平成29年6月
- 気候変動を考慮した日本の水力発電ポテンシャル評価, 第59号B平成28年6月,角 哲也・桑田光明・石田裕哉・丹羽尚人・小島裕之・井上素行・ 佐藤嘉展・竹門康弘・Sameh KANTOUSH
- 気候変動を考慮したダム堆砂進行による牧尾ダムの長期的便益評価, 第58号B平成27年6月, 寺田和暉・角哲也・竹門康弘・佐藤嘉展
井上 素行
- 「井上素行、水力発電の未来」、月刊電気現場2022年8月号水力特集(電気情報社)
- 「井上素行他、水災害に対する防災技術の転換の必要性」,科学技術・学術政策研究所, 科学技術動向2012年1・2月号
- 「水力エネルギーの価値と可能性ー豊かな水に恵まれた日本の水力を探るー」,電力土木2019年1月号No.399(電力土木技術協会),特別寄稿
- 「井上素行、山地から河川、海域にわたる 流砂系問題に対する実証的研究の推進」,科学技術・学術政策研究所, Science & Technology Trends May 2009
- 「井上素行他、再生可能エネルギーとしての新たな時代の水力」,科学技術・学術政策研究所, Science & Technology Trends March 2010
- Evaluation of Diverse Values of Hydropower,
インターンシップ
京都大学大学院工学研究科修士課程のキャップストーンプロジェクトの学生、愛媛大学農学部の卒業研究の学生などに対して、環境と調和する水力開発について、水力現場の調査や水力・環境関連の情報提供、意見交換等の支援を行っています。これまでに支援を行った学生は20名です。実施にあたっては現地の関係者やHDRIの会員、関連分野の専門家から温かいご支援をいただいています。
対象者 | 実施場所/成果物 |
兵庫県立大学 卒業研究 (高橋) | 越知川の小水力発電復活に向けた河川環境 及び関係者の認識に関する研究 |
令和3年度 | |
愛媛大学卒業研究 (本正) | 津山市阿波黒岩高原、落合川 「ハイドログラフを用いた黒岩高原と落合川の流出特性の比較」 |
愛媛大学卒業研究 (山崎) | 津山市阿波黒岩高原、落合川 「高原地形の特性を考慮した流出解析モデルの構築」 |
愛媛大学卒業研究 (杓谷) | 津山市阿波落合川 「平衡水温モデルを用いた肱川におけるアユへの影響評価」 |
令和2年度 | |
京都大学 キャップストーン (4名) | 山梨県早川町、津山市阿波 落合川 「既存インフラを活用した小水力発電のポテンシャル調査および発展に向けた検討」 |
(藤野) | 津山市阿波 落合川 「落合川流域におけるハコネサンショウウオの生息場環境と餌選択性」 |
愛媛大学卒業研究 (宮原) | 津山市阿波 黒岩高原 「黒岩高原(岡山県)の湿原植生 -成立要因およびニホンジカの影響-(第25回植生学会)」 「黒岩高原における湿地植生の分布と電気伝導度との関係」 |
令和元年度 | |
愛媛大学卒業研究 (藤澤) | 津山市阿波 黒岩高原 「黒岩高原における湿地改変に伴う環境変化と水生生物への影響」 |
京都大学卒業研究 (岩川) | 津山市阿波 落合川 「集水域の植生管理による湿地再生が小水力発電ポテンシャルに与える 影響の評価」 |
平成30年度 | |
京都大学 キャップストーン (6名) | 飛騨市坂本土木(株)、津山市阿波 落合川 「津山市阿波地区と飛騨市を事例とした水力発電事業による地域貢献」 |
愛媛大学卒業研究 (占部) | 津山市阿波 落合川 「温暖化による河川流量の変化が小水力発電に与える影響」 |
京都大学卒業研究 (太田) | 津山市阿波 落合川 「Study on a Small Hydropower Development Utilizing the Runoff Characteristics of the Wetland Basin (湿原流域の流出特性を活かした小水力発電に関する研究)」 |
平成29年度 | |
京都大学修論研究 (寺田) | 津山市阿波 落合川 「Study on Planning of a Small Hydropower Development under Consideration with the Basin Environment(流域環境を考慮した小水力発電開発計画に関する研究)」 |