代表理事 井上 素行
所属:立命館大学 総合科学技術研究機構
経歴:博士(工学) 専門は河川工学、ダム、水力発電
電力会社で水力発電所の建設・再開発、運用・保守管理などに携わった後、文科省、首都大学東京、立命館大学、京都大学等で、水力の価値、地域が主体となった環境調和型水力開発、ダムの堆砂対策、水災害などについて調査研究。
メッセージ:
HDRIの活動は、会員をはじめとする多くの皆様のご支援とご協力に支えられています。心よりお礼を申し上げます。
水は地域の固有の風土と多様な生物を育み、私たちのくらしに恵みと脅威を与えています。このために、水力の利用は治水、利水、環境、地域、エネルギーの全体的な視点で、水力の価値を総合的に生かすように取り組む必要があります。
現場の知恵、経験豊かなOBや現役世代の様々な分野の専門家、地域の人々、そして水力に関心がある人々の力を結集して、環境に調和し地域に永続的に貢献する水力開発を具体的な地点で実現するように取り組みます。また、この活動を通じて、新たな時代の水力利用の事業モデルと人材育成、技術、制度を追究して行きたいと思います。
以下は”Evaluation of Diverse Values of Hydropower”に掲載したコメントです。
Japan is suitable for hydropower generation because of its varying topology and abundant water resources. The use of natural energy resources has recently gained importance in Japan, and as such the subject of small-and medium-scale hydropower generation has drawn much attention. However, new developments have not advanced significantly. Hydropower has various advantages over other natural energy sources; it provides stable power output, and if construction and maintenance are implemented appropriately, it can provide electricity at low costs and over long timescales. Further, hydropower is environmentally friendly, and can protect and improve the environment when implemented in harmony with natural and social factors. Moreover, it has social benefits; it contributes to aspects such as regional revitalization, local attractiveness, and disaster prevention. The possibilities of hydropower are not fully understood, and methods have not yet been established for its comprehensive practical utilization. Hydropower in Japan has not been in full-scale development for a while. Therefore, there are currently only a few experts on hydropower development. Accordingly, technologies and institutions for the development of small-and medium-scale hydropower generation while ensuring harmony with the natural and social environment are required. Further, a system is also needed to allow experts to promote and support such technologies and institutions in a cross-sectional way.
副代表理事 宮永 洋一
所属:一般財団法人 電力中央研究所 名誉研究アドバイザー
経歴:博士(工学)専門は水理学、河川工学
1976年に電力中央研究所に入所し、ダム貯水池の水質予測・保全対策の研究などを担当。2007~11年に環境科学研究所長を務め、16年に退職。現在は名誉研究アドバイザーとして、IEA水力実施協定や国の委員会などに関わっている。
メッセージ:主力電源化が期待されている再生可能エネルギーの開発は、2012年に始まった固定価格買取制度の見直しなどで、新たなフェーズに入ろうとしています。新規開発の余地が小さいとされてきた水力発電も、小規模なものを中心に、自治体や地元企業などさまざまな事業者が新たに参入し、地域密着型の電源として開発される例なども増えつつあります。
大事なことは、水力発電の価値と特徴を十分に理解して開発していくことだと思います。NPO法人水力開発研究所は、その支援に取り組んでいます。
私は、電力中央研究所での業務や国際エネルギー機関(IEA)の国際協力への参加などの経験をもとに、NPOの活動の企画や情報発信などに取り組んでいきたいと思っています。
理事 角 哲也
所属:京都大学防災研究所
経歴:京都大学防災研究所水資源環境研究センター長・教授、博士(工学)
専門は水工水理学・河川工学・ダム工学
1985年に建設省入省。土木研究所、近畿地方整備局、外務省経済協力局などに勤務。1998年より京都大学大学院工学研究科土木工学専攻准教授、2009年より現職。
国土交通省社会資本整備審議会河川分科会委員、「異常豪雨の頻発化に備えたダムの洪水調節機能に関する検討会」委員長、「ダム再生ビジョン検討会」委員長、淀川水系総合土砂管理委員会委員長、近畿地方整備局ダム等フォローアップ委員会委員長、天竜川・矢作川総合土砂管理委員会委員など。
最近の著作に、今こそ問う水力発電の価値~その恵みを未来に生かすために~(編著、技報堂、2019)、ダムの科学(改訂版)(編著、ソフトバンククリエイティブ,2019)、流水型ダム-防災と環境の調和に向けて-(分担執筆,技報堂,2017)など。
メッセージ:かつての日本は,「水主火従」といわれるように,発電量のかなりの部分を水力発電が担っていました。
その後,第二次世界大戦を経て,戦後復興から高度経済成長期にかけては,増大する電力需要に対応するために,大規模火力発電施設が数多く建設され,さらには,オイルショックを経て,エネルギー安全保障の観点から原子力発電に重点が置かれました。
その結果,山間地に点在する地方の小規模水力発電は,その効率性の低さから廃止・切り捨てられるケースが多く発生しています。
現在は,東日本大震災を経て,再生可能エネルギーが脚光を浴びていますが,太陽光や風力ばかりに目が行き,純国際エネルギーである水力に対する理解は十分ではありません。
日本と同様の地形条件にある,例えば,スイスやオーストリアでは,山間地に点在する小水力発電所が100 年以上もの歴史を経て今なお健在であり,良好に維持管理されているだけではなく,さらに計画的に設備更新されながら社会に貢献し続けています。
地域に根差した日本の水力発電がなぜ発展しなかったのか,何がスイスやオーストリアと違ったのか? この問いに答えることが,今後の日本の水力発電を考える上でとても重要と考えています。
今後は,日本国内に眠る未開発の水力発電ポテンシャルを環境にも配慮しながら有効活用して事業化を進めるとともに,既存ダムの再開発や運用の工夫によって水力発電の量を増大することも重要です。
そのためには,これらを実現させるための,スキーム(制度),スキル(技術),スペシャリスト(人材)の開発と,これを実現していくための社会全体の支持が重要と考えます。
水力開発は地方創生の大きな切り札になる可能性があると思います。是非,皆さんとともに,次世代につなぐ,いい成功事例を積み上げていきたいと思います。
理事 吉岡 一郎
所属:中国高圧コンクリート工業株式会社 取締役社長
経歴:1984年中国電力に入社し、主として水力発電所の調査・計画・設計・建設・運用・保守に従事。大小合わせて4箇所の水力発電所の開発、2箇所のメガソーラーの開発に関わる。調査から竣工まで一貫して携わった帝釈川ダム・発電所の再開発事業(2006年運転開始)では、土木学会技術賞、ダム工学会技術賞を受賞。土木部長、水力部長、再エネ部長を務めた後、2020年から現職。
メッセージ:水力発電所の開発・保守に長らく携わった経験から、水力の価値(素晴らしさ)も開発の難しさも身に染みて理解しています。1/5万の地形図から水力地点を探したり、自ら計画・設計する楽しさを知っている最後の世代かもしれません。
日本にはまだまだ数多くの水力地点が開発されずに眠っています。小規模地点を中心に、地域の理解を得て地域とともに開発していくというのが今後の水力開発の一つの方向性であると考えており、HDRIの活動方針に強く共感しています。
一方で、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、再生可能エネルギーの大幅な増強が求められる中、水力のkW、kWhをどのようにして大きく増やしていくのか、新たな視点と仕掛けが必要だと感じています。水力の価値や重要性は理解されても開発に至らない現状をどう打破していくのか。簡単ではないけれども、乗り越えなければならない極めて重要な課題だと認識しています。水力発電に育ててもらった恩返しの気持ちで、役員・会員の皆さんと知恵を出し合いながら、貴重な水力エネルギーの活用に微力ながら取り組んでいきたいと思っています。
監事 藤原 信吉
メッセージ:再生可能エネルギーである水力発電の様々な価値を再評価し、わが国にまだ豊富にある水力発電の開発利用を活発化する必要があります。水力開発研究所が実施する水力開発推進のための諸事業が、特定非営利法人としての特性をいかしつつ適切に進められるよう監事として努めてまいります。